ラディザクト(トモセラピー)

強度変調放射線治療(IMRT:Intensity-modulated radiation therapy)について

強度変調放射線治療(IMRT:Intensity-modulated radiation therapy)は1990年代後半に欧米を中心に臨床応用が開始された治療技術で、日本国内では2000年頃から数施設で導入されました。その後、2008年に前立腺がん、頭頸部腫瘍および中枢神経腫瘍に対して保険適用となり、2010年からは限局性(転移がない)の固形悪性腫瘍全てに対するIMRTが保険収載され、現在にいたるまでIMRTを実施する施設が急速に増加しています。
従来の放射線治療では照射野内の強度は均一でしたが、IMRTでは照射強度を変調して照射を行います。したがって、腫瘍の形状に合わせて放射線を集中し、周囲にある正常組織への照射線量を低減することが可能です。周辺臓器に全く放射線が照射されないというわけではありません。

ラディザクト(トモセラピーの最新機器)による治療について

ラディザクト(Radixact®)は、IMRTの専用機器であるトモセラピー(Tomotherapy®)の最新機器です。ラディザクトによるIMRTでは、照射前に同一寝台上でCT画像を取得することが可能です。ここで得られたCT画像と治療計画に用いたCT画像を照合することで、治療計画通り正確に放射線治療を施行することが可能となっています。このように治療時に画像を取得して正確に照射する治療を画像誘導放射線治療(IGRT:Image-guided radiotherapy)といいます。
 
例えば、前立腺がんのIMRTでは、膀胱と直腸がおもなリスク臓器で、これら臓器の体積が変化することによって前立腺の体内での位置に大きな誤差が生じる危険があります。そのため当科では前処置として定期的な排便の確認と、治療1~2時間前に排尿を済ませ膀胱内に一定量の蓄尿をしてもらいます。しかしながら、これだけでは正確な前立腺の位置情報を確認できません。ラディザクトによるIMRTでは前述の通り、治療直前に取得したCT画像をもとに、前立腺の位置を確認・照合してから正確な治療を施行しています。適切な位置照合が困難な場合は、カテーテルを用いた直腸の排ガスや飲水の追加等の処置を行い、再度CT画像を取得してから治療を行うこともあります。
また、ラディザクトの特徴として、大きな標的に対して1回の照射で正確にIMRTが施行できるということが挙げられます。汎用機器でもIMRTを施行することは可能ですが、大きな標的に対しては照射野を分割するなどの工夫が必要で、線量評価に誤差を生じる危険があります。ラディザクトでは全脳全脊髄照射のように頭尾方向に長い照射野であっても、1回の照射で良好な線量分布を得ることが可能です。
 当センターで施行した全脳全脊髄照射

治療にかかる時間は位置照合を含め20~30分です。治療回数は疾患によって異なりますが、根治的な治療では25~30回(平日のみ)となります。治療計画から実際の治療まで、すべて保険診療で行います。

実際の治療について

1.放射線腫瘍科受診

原則として他の診療科から放射線腫瘍科の受診予約を取っていただきます。他院からの紹介についても受け付けています。詳細については医療連携課までご連絡ください。

2.放射線治療の説明

疾患や病気の進行具合、治療目的によって治療期間や照射線量は異なります。

3.治療計画CT撮影

治療開始前に必ず治療計画用のCTを撮影する必要があります。当科の診察フロアーにある専用のCTでの撮影となります。体に直接マジックで印を書くほか、頭部や体幹部の動きを押さえる固定具を作成することがあります(図)。ここで作成した固定具は毎回、治療の時に装着します。また、疾患によっては食事制限や排尿に関する前処置が必要となります。治療担当医や看護師の指示に従っていただきます。

(図)頭頸部のシェル

4.放射線治療開始

原則として治療計画CTを撮影してから7~14日後に治療開始となります。今後、この準備期間については可能な限り短縮する予定です。

5.実際の治療

通常、平日のみで1回につき20~30分を要します。根治的な治療では25~30回/5~6週間程度の治療となります。治療計画のCT画像と治療直前に取得したCT画像で位置照合が不良と判断された場合、排便や排ガスなどの処置をすることがあります。治療期間中は最低、週1回の診察(放射線治療の担当医師)を受けていただきます。

適応疾患について

原則として限局している悪性腫瘍(転移がない、あるいは転移であっても1つに限局しているなど)はすべてラディザクトによるIMRTの適応となります。疾患ごとの治療方法については放射線腫瘍科ホームページをご参照ください。
疾患や病変の存在部位によっては通常の放射線治療(リニアックによる治療)の方が適している場合があります。リニアックでの治療が劣っているというわけではありません。症例ごとに最適な放射線治療をお受けいただくことが重要です。詳しくは放射線治療担当医にお尋ねください。