大腸について
大腸は、大きく結腸と直腸に分かれます。結腸は右下腹部から左下腹部に至る1.5~2.0mの長さで、大腸の口側にあたる部分です。直腸はその後で肛門に至る15cm程度、その名の通り比較的まっすぐな部分です。大腸の壁は、粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層(しょうまくかそう)・漿膜(しょうまく)と呼ばれる5つの層からなり、大腸がんは、その中の粘膜から発生して進行とともに深部に浸潤していきます。また、大腸周囲には血管に沿ってリンパ節が点在しています。
大腸がんの症状
主な症状は、便に血液が混ざる、便が細くなる、お腹が張る、便秘や下痢を繰り返す、原因不明の貧血などです。ただし早期の状態では症状が出現することは少ないので、症状がないからと言って、検診を避けることは推奨されません。
大腸がんリスクが高い患者さん
近年、大腸がんが増加していますが、その一因として、高脂肪・低繊維食など食の欧米化(肉食中心、野菜・果物の摂取不足など)が関与していると言われています。食生活だけでなく運動不足による肥満、飲酒、喫煙などさまざまな生活習慣に関連するリスク因子が挙げられています。また、大腸がんの一部は、遺伝が関連しており、特に若くして大腸がんにかかったご家族がいらっしゃる方は大腸がんに対して注意が必要です。
予防と検診
がんを発見するための検査として、スクリーニング検査と精密検査があります。スクリーニング検査は、大勢の中からがんにかかっている可能性の高い人を見逃さずに拾い上げることが目的で、比較的簡便に行えて、結果が陰性であればがんである可能性が低くなります。結果が陽性となったからといって必ずしもがんがあるということを意味するわけではありませんが、陽性になったら精密検査が必要です。精密検査はスクリーニング検査とは異なり、患者さんの負担はやや高くても、対象とするがんを見逃さないことが必要とされます。
大腸がんのスクリーニング検査で最も広く行われているのは便潜血検査です。便を調べるだけの検査で、受診者の負担は少ないものです。がんを見逃す確率を減らすために、毎年検査をすること・一度ではなく異なる2日間(場合により3日間)の便で検査を行うことが主流となっています。気をつけないといけないのは、一度でも陽性となった場合は精密検査を受けるのが望ましいということです。「何の症状もないし、大腸内視鏡検査は気乗りがしないので・・・再度、同じ便潜血検査を受けたら陰性だったから翌年まで様子を見た」というお話を耳にしますが、推奨は出来ません。
大腸がん検診は40歳以上を対象に自治体の補助で受けることができます。便潜血検査を毎年受けることで、大腸がんによる死亡が6割減少することが示されています。有用な検診法の一つですが、受診率は4割弱にとどまっています。