神経内科

当科のご紹介

【神経内科(脳神経内科)】は、脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を内科的に診断・治療する診療科です。脳神経系の構造は複雑で障害部位、病態によってさまざまな症状を呈することから時に診断は困難を極め、熟達した専門医が必要とされます。
脳の病気のうち外科的な治療が必要な疾患は脳外科、脊髄や末梢神経の疾患で外科的な治療が必要な場合は整形外科、うつ病や統合失調症などの精神疾患はメンタルヘルス科が診療していますが、脳卒中、てんかんなど複数の科が診療にあたっている疾患もあります。
主な症状はしびれ、めまい、ふるえ、歩行障害、物忘れ、頭痛、意識障害などであり、診断のためにCT、MRI、脳血流シンチグラム、PETなどの画像検査や脳波、神経伝導検査神経生理検査、認知機能検査、疾患によって脳脊髄液検査や筋肉・神経などの生検も行っています。
従来、神経内科の病気は治りにくいものが多いことが知られておりましたが、2017年に脊髄性筋萎縮症に対するアンチセンス核酸療法、球脊髄性筋萎縮症に対するリュープロレリン酢酸塩、2019年にはミトコンドリア脳筋症に対するタウリン療法、家族性アミロイドポリニューロパチー対するsi RNA療法、2020年にはデュシャンヌ型筋ジストロフィーに対するアンチセンス核酸、2024年にはSOD1という遺伝子の病的バリアントを有する筋萎縮性側索硬化症に対するクアルソディなどが製造販売されるようになり、治療可能な疾患も増えてきています。

特色

当科は3人の常勤神経内科専門医と3人の非常勤の神経内科専門医が日本神経学会の神教育施設に認定されています。
高齢化社会においては認知症、パーキンソン病などの患者が増加していることが知られており、当科では物忘れ外来、パーキンソン病初診外来などで、地域と連携した診療にあたっています。認知症や神経難病患者さんの診療は外来を中心としたものですが、合併症などに対し適宜入院の対応を行っています。
また脳神経疾患診断のために重要な検査として電気生理検査がありますが、これはギラン・バレー症候群、慢性炎症性多発神経根炎(CIDP)、重症筋無力症などの診断のためには必須です。最新の磁気刺激検査を含めて地域の神経内科や整形外科など専門家からの依頼を受けております。

主な疾患

神経内科で実施している難治性疾患

このような症状の方を診察いたします

しびれ、頭痛、ふるえ、物忘れ、運動麻痺、ろれつ障害

主な検査

画像検査(CT、MRI、脳血流シンチ、MIBG心筋シンチ、DATスキャン)、PET(抗アミロイド抗体薬投与を前提としたアミロイドPET)
生理検査(脳波、ビデオモニター脳波、筋電図、磁気刺激検査、神経伝導検査、誘発電位)
髄液検査、タップテスト、神経筋生検

主な実績

診療実績(2024年度)

入院
延患者数 新患者数 1日平均患者数
3,554 190 9.7
外来
延患者数 新患者数 1日平均患者数
8256 687 34.0
疾患毎の内訳

・脳血管障害:48人(うち7日以内32人)
・神経変性疾患:48人(パーキンソン病34人、他のパーキンソニズム(PSP、CBDなど)8人、その他6人)
・認知症性疾患:25人(アルツハイマー病14人、血管性認知症1人、その他10名)
・免疫性中枢神経疾患(多発性硬化症、脊髄炎、ベーチェット病など):11人
・末梢神経疾患(ギランバレー症候群、CIDP):18人
・筋疾患(筋炎、横紋筋融解など):7人
・神経感染症(脳炎、脊髄炎など)および脳症:21人
・てんかん:9人
・その他:37人

認定施設、専門医・指導医資格

日本神経施設 日本認知症学会認定施設
神経内科専門医・指導医 3名
認知症専門医・指導医 1名
臨床遺伝専門医 1名
脳卒中学会専門医 1名

疾患詳細

脳梗塞について

脳梗塞とは
脳梗塞(のうこうそく)は、脳の血管がつまって血液の流れが止まる病気です。血流が途絶えると脳の組織は数分から数時間で障害を受け、命にかかわることや、言葉や上下肢のまひなどの後遺症が残ることがあります


種類
脳梗塞には主に次の3つのタイプがあります。

  • アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化によって血管の内側に血栓(血のかたまり)ができ、脳の血管をふさぐタイプ
  • 心原性脳塞栓症:心房細動など心臓の病気でできた塞栓(血のかたまり)が脳に流れてきて、血管を急につまらせるタイプ
  • ラクナ梗塞:脳の細い血管がつまるタイプ

主な症状
脳梗塞は突然起こるのが特徴です。代表的な症状は以下のとおりです。

  • 顔の片側がゆがむ、口元からよだれが出る
  • 片腕や片脚に力が入らない
  • 言葉が出にくい、ろれつが回らない、話が理解できない
  • 物が二重に見える
  • 激しいめまいやふらつき

早期発見の合言葉「FAST」
脳梗塞は一刻も早い対応が必要です。世界的に使われているチェック方法が「FAST」です。

  • F(Face:顔) 顔の片側がゆがんでいないか?
  • A(Arm:腕) 両腕を上げて片方が下がってしまわないか?
  • S(Speech:言葉) ろれつが回らない、言葉が出にくいことはないか?
  • T(Time:時間) ひとつでも当てはまれば、すぐに119番に通報し、救急搬送を依頼してください。

治療について
脳梗塞の治療は時間との勝負です。発症から時間が経過すると治療の選択肢が限られ、後遺症が残りやすくなります。

  • 血栓溶解療法(t-PA静注療法):血栓を溶かして血流を再開させます。必ず行えるわけではありません。
  • 血管内治療(カテーテル治療):カテーテルを使い、詰まった血栓を直接取り除く方法です。必ず行えるわけではありません。

予防のために
脳梗塞は生活習慣病と深く関わっています。日頃から以下に気をつけましょう。

  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療と管理
  • 禁煙
  • 塩分を控えた、バランスのよい食事
  • 適度な運動
  • 心房細動など心臓病の早期発見と治療

認知症

 

アルツハイマー型認知症

認知症とは、一度獲得した記憶力や判断力などが低下して、社会生活に支障をきたす状態を指します。主な認知症としてアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症などが知られていますが、中にはビタミンなど栄養の欠乏によるもの、プリオン病など特殊な原因によるものも知られています。
2025年には団塊の世代が75歳以上になり、認知症の人口も700万人以上になることが知られています。
アルツハイマー型認知症のアミロイド蓄積の予防としては十分な睡眠をとること、適度な運動、適切な栄養など、薬物療法以外のことも多数知られておりますが、薬物としてはアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)の進行抑制薬として2023年以降、レカネマブ、ドナネマブなどの抗アミロイド抗体薬が上梓されました。
当院でも下記のような流れでこれらの薬剤投与が可能となっております。
当院に受診する患者様のみならず、クリニックからの紹介の患者様も積極的に診療しております。
周囲の人からみて物忘れがはっきりしている認知症の患者様から、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)の段階から投与が可能です。

診療の流れ
①外来受診(認知症の初診は神経内科の一般外来の初診でも、物忘れ外来でも受け付けています)
②認知機能検査 下記の基準を満たした場合
③脳MRI検査、脳血流シンチグラムによる評価
 出血や浮腫などがないことを確認、脳血流シンチグラムでの血流低下部位を評価
④アミロイドPET検査:アミロイド抗体薬を投与することを前提に検査する場合には保険適用検査となります。
⑤ApoE遺伝子多型検査:保険適応外検査ですが、ApoE ε4/ε4型の方の場合には、抗アミロイド抗体薬で浮腫や出血などのアミロイド関連画像異常(ARIA)を起こし易いことが知られています。血液検体を用いて遺伝子多型を検査し、患者さんと相談の上、抗アミロイド抗体薬の適応を決定します。必要な場合には遺伝カウンセリングも行います。

上記のような流れでアミロイド抗体薬投与の適応を決定してゆきます。アミロイド抗体薬は、脳MRI上、微小出血や浮腫など、アミロイド関連画像異常 ARIA)の副作用が知られているため、頭部MRIの頻回の確認が必要です。また、ApoE ε4はARIAの危険因子ともなっており、遺伝子多型の結果によっては患者様、ご家族と相談の上、アミロイド抗体薬を使用しない場合もあります。その際には従来からの認知症薬を使用します。

重症筋無力症

重症筋無力症(Myasthenia Gravis)は神経と筋肉の接合部(神経・筋接合部)の障害により神経から筋への神経伝達が悪くなる疾患です。末梢神経終末からはアセチルコリンという神経伝達物質が放出されていますが、重症筋無力症の患者さんでは、筋肉側のアセチルコリンの受容体に対する抗体約80%の疾患で神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する抗体(アセチルコリン受容体抗体)、Musk抗体などが産生される結果、筋肉に力が入らなくなったり、夕方になると筋肉が疲れる:易疲労性が出現します。発症年齢:5歳前後と成人期にピークがあります。
病型は眼筋型・全身型があり眼筋型の比較的症状の軽度の方から、全身型まで病型があります。顔筋型方の50〜70%が全身型に移行すると言われています。重症筋無力症の患者さんの10%:胸腺腫, 70%:胸腺過形成があると言われており、検査としては、末梢神経の反復刺激を行います。治療は以下の通りです。

胸腺腫

  • 胸腺摘出
  • 悪性度が高ければ放射線・化学療法
  • 再発時
  • ステロイドパルス
  • ガンマグロブリン
  • 再発予防
  • ステロイド
  • タクロリムス
  • シクロスポリン
  • エクリズマブ(抗C5補体)モノクローナル抗体
  • エフガルチギモド
  • その他
  • コリンエステラーゼ阻害薬
  • ピリドスチグミン, アンベノニウム塩化物

最近では、再発予防のお薬の種類がかなり多くなり、特定疾患の申請をしていただいた上で、さまざまな再発予防薬を検討し、再発なくお過ごしいただける期間がかなり長くなりました。患者さんの年齢やライフステージ、職業や希望をお聞きしながら、適切な再発予防薬を選択しています。担当医にご相談ください。

一次性頭痛

一次性頭痛とは 頭痛には大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。

  • 一次性頭痛は、脳や体に明らかな病気がなく頭痛が繰り返されるタイプの頭痛です。
  • 二次性頭痛は、くも膜下出血や脳出血など、ほかの病気が原因で起こる頭痛です。

一次性頭痛は生命に直接関わることはありませんが、繰り返すことで生活の質を大きく下げることがあります。


主な種類
一次性頭痛にはいくつかの代表的なタイプがあります。

  • 片頭痛:片側または両側に脈打つような強い頭痛が起こり、吐き気や光・音に敏感になることがあります。チカチカした光が見えるなどの予兆を認める場合もあります。月に数回起こる方も少なくありません。
  • 緊張型頭痛:頭全体やこめかみが締めつけられるように痛む頭痛です。長時間のデスクワークやストレス、肩や首のこりと関係することが多くあります。
  • 群発頭痛:一定の期間に集中して起こる非常に強い頭痛で、片側の目の奥が激しく痛みます。

診断と治療
一次性頭痛は、症状の特徴や頭痛の頻度・持続時間などを詳しく聞き取り、必要に応じて画像検査などで「二次性頭痛」を除外した上で診断します。
治療は頭痛の種類によって異なります。

  • 片頭痛:専用の薬(トリプタン製剤など)や予防薬が有効です。
  • 緊張型頭痛:生活習慣の改善、ストレッチ、マッサージ、運動などが有効です。
  • 群発頭痛:酸素吸入や専用の薬を使った治療が行われます。

日常生活での工夫

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 睡眠不足や過労を避ける
  • ストレス対策やリラックス法を取り入れる
  • 頭痛日記をつけて発作のパターンを把握する

まとめ
一次性頭痛は命にかかわるものではありませんが、繰り返すことで日常生活や仕事に大きな支障をきたすことがあります。適切な診断と治療、そして生活習慣の工夫により、多くの方が症状を軽減できます。頭痛が頻繁に起こる場合や、普段と違う強い頭痛が現れた場合は、早めに医療機関を受診してください。

てんかん

てんかんは、脳の神経細胞が一時的に異常な電気活動を起こすことで、けいれんや意識の変化などの発作を繰り返す病気です。日本には約100万人の患者さんがいるといわれ、決して珍しい病気ではありません。発症は小児から高齢者まで幅広く見られます。


主な症状
てんかんの症状(発作)は人によって異なります。代表的なものは次のとおりです。

  • 全身にけいれんが起こり、意識を失う。
  • 体の一部がけいれんする。全身に発展する場合もある。
  • その他の症状:突然動作が止まる、無意識に同じ動作を繰り返す等の場合もあります。

診断と治療
てんかんは、発作の様子・脳波検査・画像検査などを組み合わせて診断します。
治療の中心は薬物療法(抗てんかん薬)です。薬で効果が得られにくい場合には、外科手術や神経刺激療法などが検討されることもあります。


日常生活での注意

  • 規則正しい生活(十分な睡眠)を心がけましょう。
  • 飲酒が引き金となることがあります。飲酒は控えましょう。
  • 発作がある方は原則として自動車の運転は禁止です。医師と良く相談しましょう。

周囲の方へ(発作時の対応)
てんかん発作を目にした場合は慌てずに対応しましょう。

  • 倒れても安全な姿勢にして、けがを防ぐ。
  • 口の中に物を入れない。(気がついた時には、すでに口の中をかんでしまっていることが多く、役立ちません)
  • 体をゆすったり叩いたりしない。(発作が早く終わるわけではありません)
  • 5分以上けいれんが続く場合や意識が戻らない場合は救急車を呼んでください

まとめ
てんかんは、適切な治療と周囲の理解があれば、多くの方が安心して生活できる病気です。発作が疑われる症状がある場合は、早めに専門の医師にご相談ください。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)

CIDPは2ヶ月以上にわたって進行性または再発性の経過を辿る炎症性・脱髄性の多発ニューロパチー(末梢神経障害)の病気です。末梢神経に散在性・びまん性の脱髄が生じ、四肢脱力・感覚障害を呈します。末梢神経はCT, MRIといった検査では評価できません。
末梢神経伝導検査を行うことにより、評価し、適切に治療することが肝要です。

有病率 ~2人/10万人

検査:脳脊髄液:蛋白細胞解離
神経伝導検査:伝導速度低下, 伝導ブロック

<治療>
活動期

・副腎皮質ステロイド・γグロブリン大量療法・血液浄化療法

再発予防
・ステロイドや免疫抑制剤の内服
・IVIG や皮下点滴などが再発予防として用いられてきました。
・Fc-RN 阻害剤
週1回のエフガルチギモド点滴製剤・皮下注製剤なども治療に使用されています。
皮下注射の自己注射の指導も行っています。


皮膚筋炎・多発筋炎

  • 四肢の脱力:四肢、特に遠位の筋力低下が見られ、手を使った細かい動作ができにくくなったり、足に力が入りづらくなって、歩行時に転びやすくなります。
  • 四肢の感覚障害:四肢のしびれ感や異常感覚などで、感覚が鈍って、細かい動作ができにくくなったり、起立、歩行時に地面の様子がわからなかったりして、歩行困難になることもあります。
  • その他の症状

診断
診断には診察に加え、血液検査、針筋電図、筋肉の生検などが行われます。


治療
治療の中心は副腎皮質ホルモン剤(ステロイド薬)です。必要に応じて免疫抑制薬やガンマグロブリン製剤が併用されます。治療効果を維持するためには、定期的な通院と継続的な薬の内服が重要です。

日常生活での注意点

  • 免疫療法治療中は感染症にかかると悪化する可能性があるため、手洗い・うがい・予防接種を心がける
  • 医師の指示に従い、定期的に検査を受ける

まとめ
多発筋炎・皮膚筋炎は自己免疫の異常で筋肉や皮膚に炎症が起こる病気です。筋力の低下や皮膚の発疹が見られた場合には、早めの診断と治療が大切です。気になる症状がある方は専門の医師にご相談ください。 

内科的疾患による神経症状について

内科的疾患と神経症状の関係
糖尿病や甲状腺疾患、肝臓や腎臓の病気など、全身の内科的な病気が原因となって神経症状が出現する場合があります。


主な例

  • 糖尿病性末梢神経障害:手足のしびれ感や感覚の低下、自律神経障害による立ちくらみなどが現れることがあります。 甲状腺疾患による神経症状:甲状腺機能低下症では物忘れや筋力低下がみられることがあります。甲状腺機能亢進症では手の震えや複視がみられることがあります。
  • 肝性脳症(肝不全による神経症状):肝臓が十分に働かなくなると、体内にアンモニアなどの有害物質がたまり、意識障害や手の震え(羽ばたき振戦)がみられることがあります。
  • 電解質異常による神経障症状:ナトリウムやカリウムなどの体内バランスが崩れると意識障害や脱力が起こることがあります。
  • ビタミン欠乏による高次機能障害や末梢神経障害:ビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症や末梢神経障害など、栄養状態も神経に大きな影響を与えます。

診断と治療
問診・診察・血液検査・画像検査などを組み合わせて原因を調べます。
治療は原因となる内科疾患のコントロールが中心です。たとえば、血糖コントロール、甲状腺機能の調整、肝臓の治療、栄養改善などです。


まとめ
しびれ感、震え、物忘れ、意識障害などの神経症状は糖尿病や甲状腺疾患、肝臓の病気など、内科的疾患に伴う可能性もあります。気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診し、全身の状態を含めた評価を受けることが大切です。

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