特発性拡張型心筋症とは
拡張型心筋症は、心臓を動かしている筋肉が弱くなる疾患で、厚生労働省が定める特定疾患(難病)の一つです。血縁で遺伝することもありますが、突然発症することも多く、ほとんどの原因はわかっていません。
初期では、はっきりとした症状はみられませんが、他の心臓の疾患と同じように、心臓の働きが弱ると、体の中では、心臓を大きく拡張させて対応しようとする力が働くため、レントゲン写真では心臓が「肥大」しているように見えます(正確には肥大ではありませんが、しばしばこのように呼ばれます)。
当センターでできる検査・治療
心臓が似たような状態になる疾患は少なくなく、以前は心臓弁膜症や脚気が多かったのですが、時代とともに変化し、現在は心臓を栄養している冠状動脈がつまることによるものがほとんどです。
その他にもウイルス性や頻脈性の不整脈によるもの、出産の前後にみられるもの(産褥心筋症)、アルコールの大量摂取によるもの、抗がん剤によるもの、サルコイドーシスによるもの、寄生虫によるものなどで似たような状態になることが知られていますので、まずこうした疾患でないことを正確に診断することが重要になります。
そのために、呼吸器内科や感染症科、膠原病・アレルギー内科、神経内科、放射線科といった各科の専門医の協力が必要になりますが、当センターでは病院内で十分な対応が可能となっています。
診断の流れとして、詳細な病歴の聴取から始まり、マルチスライスCTやMRI、シンチグラム、PET-CTなどを用いた検査が行われ、治療に対する効果もふまえて、総合的に判断されます。必要と判断された場合には、入院していただき、カテーテルを心臓の中に入れて、心臓の一部をつまみ取って調べる(心筋生検)こともあります。
初診時に、動悸や息切れ、むくみ、といった自覚症状がみられた場合、すでに進行していることが少なくないため、早く良くなるかについて心配されますが、ほとんどの場合、内服薬を調節しながら、年単位での治療が必要になります。
内服薬以外にも循環器内科で行う治療には、カテーテルアブレーション、植込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法(CRT-Dあるいは両室ペーシング)、マイトラクリップ(MitraClip)などがあります。また、心臓血管外科と協力して行う治療として、僧帽弁形成術、左室形成術、補助人工心臓(VAD)がありますが、これらで改善が見込めない場合、臓器の提供を受けて心臓移植を行うという選択肢があります。こうした治療の一部については、大学病院に紹介しています。
重症になると、退院してもまたすぐに悪化して再入院になることが少なくありませんが、当センターは救命救急センターを有しており、急な悪化にも対応することが可能ですので、ほとんどの患者さんに当センターで継続して治療を受けていただいています。
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両室ペーシング機能付き植込み型除細動器と僧帽弁形成術を受けた患者さんの写真 |
カテーテルを用いた心筋生検 |
当センターでの実績
新規の心臓再同期療法(両室ペーシング):1件
カテーテルを用いた心筋生検:3件