当科の紹介
2025年10月に乳腺・甲状腺外科の甲状腺外科領域として診療を開始しました。
甲状腺外科部門では、甲状腺・副甲状腺の内視鏡手術に特化した、 専門性の高い診療を中心に行います。
特色
当科は、内視鏡手術に特化した手術治療を行います。
これまで、大学病院にて400例以上の内視鏡下甲状腺・副甲状腺手術を行い、国内15施設以上への手術指導を行ってきた専門医・技術認定医により、整容性に配慮した手術治療を行います。
近隣の専門病院や大学病院、クリニックと緊密な連携を図り、患者さんがより安心してスムーズな治療や経過観察を受けてもらえるように努めています。
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内視鏡下甲状腺手術(VANS法)
頸部を切開するこれまでの手術(通常法手術)では、傷跡が目立つ位置にできることから、患者さんの生活の質(Quality of Life: QOL)を低下させる恐れがあります。当センターで実施している内視鏡補助下頸部手術(Video-assisted neck surgery: VANS法手術)は、頸部に傷跡を残すことがなく、整容性に配慮した手術です。VANS法手術では、片側の鎖骨下の3cm程度と鎖骨上の5mmの2箇所の傷で手術を行います。
通常法手術との違いや特徴などは、以下の表をご参照ください。
術式 |
通常法手術 |
VANS法手術 |
傷跡の例
(右葉切除の場合) |
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手術時間 |
1~1.5時間程度 |
1.5~2.5時間程度 |
入院期間 |
いずれも術後3~4日程度で退院
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起こりうる合併症 |
(1)反回神経麻痺
(2)術後出血
(3)甲状腺機能低下症 等 |
(1)~(3)のほか、
(4)鎖骨下~前頸部の違和感、感覚低下
(5)皮膚熱傷 等 |
長所 |
手術時間が短い |
頸部に傷跡が残らない |
短所 |
頸部の傷跡が目立つ |
術後の頸部違和感が生じやすい |
その他 |
手術に精通した術者が行えば、手術の安全性や確実性に明らかな相違はない |
手術適応
良性腫瘍:60mm程度までのもの
悪性腫瘍:甲状腺外への浸潤がなく、リンパ節転移のない、またはあっても軽度(中央区域リンパ節転移まで)のもの
バセドウ病:甲状腺が大きくなく(推定60g以下)、かつコントロールが良好なもの
原発性副甲状腺機能亢進症(副甲状腺腫瘍):術前検査にて腫瘍の場所がはっきりしている単腺の腫瘍
手術適応については個々の状態によりますので、詳しくは外来にてご相談ください。
メリット
最大のメリットは、頸部に傷跡が残らないことです。このような襟元が開いた衣服でも傷跡を隠すことができます。
デメリット
通常法手術では前頸部のみ皮下を剥離するのに対して、VANS法手術では鎖骨下から前頸部まで広範囲の剥離をする必要があります。そのため、術後に鎖骨下〜頸部の違和感(硬い、つっぱる、飲み込みにくい、など)や感覚低下(しびれ)が生じやすい傾向にあります。しかし、数ヶ月程度で徐々に解消していくことがほとんどです。
また、通常法手術と比較すると手術時間も延長します。
他の臓器での内視鏡手術は、”低侵襲”な手術であることが多いですが、VANS法手術は通常法手術と比較すると、必ずしも”低侵襲”ではありません。
術後経過
おおよそ術後3~4日で退院が見込めます。個人差がありますが、退院後数日〜1週間程度お仕事や学業へ復帰が可能です。
その他
当科での診察により、内視鏡手術の適応外であった場合、手術治療は近隣の専門病院や大学病院をご紹介させていただくことがあります。予めご了承ください。
また、一般的な甲状腺疾患(バセドウ病、亜急性甲状腺機能亢進症、無痛性甲状腺機能亢進症、橋本病、甲状腺機能低下症など)・副甲状腺疾患の診療も可能です。糖尿病内分泌科と連携を図りながら、診療にあたってまいります。
扱う疾患
甲状腺良性腫瘍、甲状腺悪性腫瘍、バセドウ病、自律性機能性甲状腺結節、原発性副甲状腺機能亢進症 など
このような症状の方を診察いたします
頸部の腫れ、しこり、検診・ドックで要精査
主な検査
採血、頸部超音波検査、穿刺吸引細胞診、CT、シンチグラフィー、骨密度