完全大血管転移症

完全大血管転位とは

完全大血管転位症は、右心室から大動脈、左心室から肺動脈が出ている病気です。心室中隔欠損を伴わないものはⅠ型、心室中隔欠損を伴うものはⅡ型、心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴うものはⅢ型と呼びます。
肺からかえってきた酸素を多く含む動脈血が全身に送られにくくなるため、出生直後から低酸素血症になります。低酸素が強い場合、生まれてすぐにカテーテル治療が必要な事もあります。
現在では、I型、II型の場合は、新生児期に冠動脈の移植を含む大血管スイッチ術(Jatene手術)を行います。III型では幼児期に人工血管を用いるRastelli手術を行うこともあります。
大動脈スイッチ手術の後の完全大血管転位症の予後は比較的良好ですが、①大動脈弁閉鎖不全、②肺動脈、大動脈の狭窄、③冠動脈の吻合部の狭窄などについて注意深く経過を観察する必要があります。

当センターでできる検査・治療

完全大血管転位症を始めとした先天性心疾患は、出生直後から治療介入を必要とすることがあります。また、何度も手術が必要な場合や、手術を受けた遠隔期に心臓の機能が低下する場合や合併症が起こる病気もあるため、長期間にわたるフォローアップが必要になります。そのため、お母さんのお腹の中にいる時(胎児期)から成人に移行するまでの長期間にわたりさまざまな検査を行い、患者さんが元気に成長できるお手伝いをさせていただいています。
当センターで行なっている検査・治療については下記のとおりです。

胎児心エコー

産科医によるスクリーニング検査や地域のクリニックなどで先天性心疾患が疑われた母体に対し、胎児心エコー検査を施行しています。赤ちゃんの心臓に病気がみつかった場合、産科、新生児科、小児科、必要な時は心臓血管外科や麻酔科も含め出生前から治療方針を話し合い、赤ちゃんが適切な治療を受けられる取り組みを行なっています。

心臓超音波検査

診断、手術前後の評価、外来でのフォローアップに欠かせない検査です。当センターではNICU、ICU、小児科病棟のどこに入院していても小児循環器専門医による心臓超音波検査を受けられる体制を整えています。

心臓カテーテル検査・カテーテル治療

心臓カテーテル検査は手術の適応評価や術後評価のための検査です。心臓や血管に直接カテーテルという細い管を入れ、血管内の圧力測定、血流バランスの評価、心臓の大きさや機能評価、血管の形態評価を行います。また、検査だけでなくカテーテル治療も行なっています。
①経皮的心房中隔裂開術
完全大血管転位症や単心室症など、生きていくために心房中隔(右心房と左心房の間の壁)を開けておく必要がある病気に対して行います。
②コイル塞栓術
単心室症を始めとしたチアノーゼ性心疾患(慢性的な低酸素の状態につながる心疾患)では体肺側副血管と呼ばれる異常血管が発達することがあります。これらは弁膜疾患の増悪、心不全、手術後の循環動態の悪化の原因になることもあるため、適切な時期に金属のコイルで血管を塞栓します。
③経皮的血管形成術・ステント留置術
手術の影響などにより遠隔期に血管が狭窄し、循環動態に影響を及ぼすことがあります。その場合は風船付きのカテーテルを用いて、狭窄した血管を血管の中から広げる治療を行います。風船治療で効果が乏しい場合は血管内にステントという金属製の筒を留置することもありますが、成長過程にあるお子さんの場合はステント留置ができないことも多く、適応を慎重に考えて行なっています。

その他

CT検査、MRI検査、肺血流シンチ、運動負荷心電図などを行い、術前術後評価、不整脈疾患の有無などの評価も行なっています。

当センターでの実績

2019年度
・新規診断例
完全大血管転位症:1例

・胎児心エコー(総数):63件 (外来50件、入院13件)
・小児科心臓超音波検査(総数):2652件 (外来1992件、入院660件)
・心臓カテーテル検査(総数):検査107件、治療:23件
完全大血管転位:検査3例、治療:経皮的心房中隔裂開術1例

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