乳がんの治療法
乳がんの治療は、「手術」や「放射線治療」による局所治療でしこりを取り除き、「抗がん剤治療」や「ホルモン療法」で全身に広がるがんの芽を摘み取るというように、いくつかの治療法を組み合わせて行います。
治療法の選択は、がんの病状以外にも、年齢、生活・家庭環境、別の病気の有無、本人の希望など、あらゆる要素に配慮します。乳房の全摘手術を勧めると、がんが進行しているからだと思い悩む人が少なくないのですが、がんの性格や場所、妊娠中か否か、家族性か否か等、総合的な判断のもとにベストな治療法を選択していきます。
①術前化学療法
抗がん剤治療や分子標的薬治療は、手術前または手術後に行う場合があります。化学療法の目的は、「転移・再発を防ぐ」ことにあるのですが、術前化学療法には、しこりが大きく乳房温存手術ができない人にも、温存の可能性が出てくるメリットがあります。
化学療法によって、7割以上の患者さんはしこりが小さくなります。乳癌のタイプによっては手術のときに半数以上の方で乳癌が消滅している場合もあります。薬の効果を実感できた患者さんは、副作用に対しても前向きになれます。あらかじめ抗がん剤治療が必要と判断された患者さんは、術前に行う方がメリットを感じられます。
②手術
手術には、乳房の一部を切除する「乳房温存術」と、胸筋を残して乳房を全て切除する「乳房切除術」があります。
■a. 乳房温存術
しこりを中心に円状に切除し、乳頭と乳輪を残す方法です。元の乳房としこりの大きさのバランス・広がりで適応を判断します。例え、しこりが小さくても、温存術が適さない場合には乳房切除術を行うことになります。なお、乳房温存術後放射線治療は標準治療です。
温存すると、見た目の問題はある程度クリアできますが、残した乳房内に再びがんができる局所再発の可能性が3~5%残ります。
ただし、乳房温存術が適さないケース①がんが広範囲に広がっている、②複数のしこりが離れた場所にある、③乳頭からしこりまでの距離が近い、④膠原病、妊娠中などの理由で放射線治療が行えない等があります。
■b. 乳房切除術
乳房の下層にある大胸筋・小胸筋を残して乳房を切除する方法です。
③センチネルリンパ節生検
わきの下のリンパ節を切除するリンパ節郭清は、手術前の検査で明らかな転移が認められる場合と、手術中のセンチネルリンパ節生検で転移が判明した場合に行います。微少なリンパ節転移や転移が陰性と判断されれば、わきのリンパ節の切除は省略されます。上肢を守るのが目的です。
当センターでは、色素法とCTリンパ管造影法を用いて、高いセンチネルリンパ節の同定率を保っています。
④放射線治療
温存した乳房全体に放射線を当ててがん細胞を破壊すると、乳房内の再発を約3分の1に減らせることが明らかになっています。放射線治療は、顕微鏡検査の結果、必要と判断された患者さんに、ほぼ毎日、約6週間続けられます。
⑤術後補助療法
乳がんはしこりが見つかった時にはすでに、がん細胞が血液やリンパの流れにのって全身回っている可能性があるため、手術や放射線による局所療法だけで安全に再発を抑えることができません。
そこで行う治療が、術後補助療法です。「抗がん剤治療」、「ホルモン療法」、「分子標的薬治療」などがあり、どの治療を選択するかは、術後の病理検査や年齢などで決まります。
⑥乳房再建
乳がんなどによりなくした乳房を新たに作って乳房の喪失感を軽減し、併せて身体的な問題の改善を目指す手術のことです。再建の方法としては、人工の乳房を使用する方法と、自分の体の一部を移植する方法の二つがあります。
再建を行う時期は、乳がんの手術と同時に行う「一次再建」と、手術から1~2年後に行う「二次再建」があります。いずれの方法も長所・短所がありますので、ご自身で納得のいく選択をしましょう。
乳がんの治療の詳細は、
こちらをご覧ください。
乳がんの治療実績
無再発累積生存率 |
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