パーキンソン病・パーキンソン症候群とは
パーキンソン病(PD)とは中脳の黒質のドパミン産生細胞が減少することにより、寡動(動きが遅く少なくなる)、筋強剛(筋肉が固くなる)、振戦(ふるえ)、姿勢調節障害などの症状をきたす疾患です。上記のような運動症状に加えて、非運動症状として、便秘や起立性低血圧などの自律神経障害、むずむず脚症候群、嗅覚障害、抑うつや幻視などの精神症状を合併することも知られており、しばしば運動症状の前駆症状として出現します。日本での有病率は10万人に対して100〜300人程度です。治療にはL-ドパ、ドパミン受容体刺激薬、MAO-B 阻害薬、COMT阻害薬、イストラディフィリンやゾニサミドなど多数の薬剤が用いられ、強弱はあるものの10年以上にわたり(長い方では20年以上)効果が持続します。当院では患者様の毎日のスケジュールを確認しながら最適な薬物療法を検討しています。
最近ではデバイス補助療法(DAT)によるL―dopa(ホスカルビドパ)の24時間持続治療も開発されており、当院でも数人の患者さんが原因・疾患感受性遺伝子や病因に関する研究も進んでおり、代表的な病理所見であるレビー小体の構成成分のα-synucleinなど様々な蛋白に対する抗体療法など、疾患修飾治療の開発が現在進行中です。さらに、PDの遺伝学的な背景も明らかになってきており、東京大学脳神経内科との共同研究で、十分な遺伝カウンセリングの下、遺伝学的検査を実施しています。
PDと同様の症状を呈しながら、別の病因に関連している疾患をまとめてパーキンソン症候群と呼んでいますが、原因として脳血管性パーキンソニズム ・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症などの変性疾患以外の疾患もありますが、特定疾患に認定されているのは進行性核上麻痺 (PSP) ・大脳皮質基底核変性症(大脳皮質基底核症候群)(CBD/CBS) ・多系統萎縮症 (MSA-P)です。PSPでは垂直性眼球運動障害や前頭葉障害や易転倒性を、CBSでは失行・皮質性感覚障害・失語などの皮質症状を、MSAでは小脳障害や高度の自律神経症状を合併します。これらを鑑別するためには、脳MRIでの検索はもちろん、PDで取り込み低下をきたすことの知られている[123I ]MIBG心筋シンチグラムでの交感神経節後線維の評価、[123I ]β-CIT シンチグラム (通称 ドパミントランスポーターシンチ)での線条体ドパミンの評価、脳血流シンチグラム([123I ]IMP)なども重要なツールとなります。パーキンソニズム をきたす疾患には、レビー小体型認知症や、前出のCBS、アルツハイマー型認知症などの認知障害をきたす疾患群もあり、これらの疾患の診断には脳血流シンチグラムやMMSE、FABなどの認知機能検査も重要です。
十分な診察所見とこれらの検査を組み合わせることにより、正しい臨床診断に至ると考えられます。正しい診断がつけば特定疾患の申請を行います。慢性的で長い経過中には疾患に伴う誤嚥性肺炎や尿路感染症なども出現してくるため、必要な場合にはその治療や、胃瘻造設やリハビリテーションを目的とした入院も計画します。さらに多職種で意思決定支援や療養に関するカンファレンスなども行いながら、患者さんに伴走する体制をとっております。
参考:シンチグラム画像
2024.4.1~2025.3.31
[123I ]MIBG心筋シンチグラム
正常 早期相・遅延相での心/縦隔(H/M)比は保たれている。洗い出し亢進もなし。
PD 早期相・遅延相での心/縦隔(H/M比)の低下 洗い出し亢進
[123I ]β-CIT シンチグラム (通称 DATシンチ)
PD 線条体(特に後部)の取り込み(C I T値)低下
正常 線条体の取り込みは保たれている
脳血流シンチグラム([123I ]IMP)
レビー小体型認知症 後頭葉優位の血流低下
当センターでの実績
2019年度
[123I]MIBG心筋シンチグラム:72例
[123I]β-CIT シンチグラム(通称 DATシンチ):39例
2020年度
[123I]MIBG心筋シンチグラム:49例
[123I]β-CIT シンチグラム(通称 DATシンチ):58例