食道がんの治療法
食道がん治療は、ステージにより異なります。標準治療として、切除(内視鏡による切除、手術)、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法の3つがあり、これらの治療を単独、あるいはいくつか組み合わせて行います。
①内視鏡による切除
ごく早期の場合、内視鏡による切除が可能です。粘膜下層に特殊な薬剤を注入し、がんの周囲を膨らませて電気ナイフを使って病巣を切り取ります。食道の壁に穴があいたり、出血したり、切除後に食道が狭くなるなどのリスクはありますが、身体への負担が少ない治療と言えます。約1週間の入院期間が必要です。
②手術
がん治療の基本は手術です。食道と胃の一部、周囲のリンパ節を切除し、通常は胃を使って再建します。手術時間は5~10時間に及びます。肺炎、反回神経麻痺(声がかすれる、飲み込みが悪い)、縫合不全(縫い合わせがうまくつかない)などが主な合併症です。当科では2014年度より胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術が保険収載されたのを受けて、2015年より胸腔鏡下食道がん根治手術を導入しました。現在はほとんどすべて胸腔鏡下で手術を行っております。医療機器や画像の進歩に伴い、手術創の縮小という段階から、より安全で精度の高い手術により治療成績の向上を目指すという段階に入っています。低侵襲で術後の回復が早く、従来の開胸手術に比較して合併症が減りました。術後平均在院日数は22日です。
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③化学療法
食道がんの治療に用いられる主な薬剤には、5FU、シスプラチン、ドセタキセルなどがあります。複数の薬剤を組み合わせることが多く、効果と副作用を見ながら治療を進めていきます。ステージⅡ・Ⅲの場合、手術に先行して化学療法を行うことで治療成績が向上することが知られています。近年の話題としては、2020年3月にがん免疫療法であるオプジーボが食道がん治療に承認されました。
④放射線療法
CTスキャンを用いて治療する位置決めをして、毎日少量ずつの線量を当てます。1回の照射時間は数分です。週5回、約6週間の治療で根治を目指します。手術のように身体に傷はつきませんが、食道が狭くなる、穴があく、出血する、臓器機能低下など様々な副作用があります。当センターでは、定位放射線照射や強度変調放射線治療などの高精度放射線治療を行っています。詳しくは、
高精度放射線治療のページを参照ください。
⑤化学療法+放射線療法
手術が適さない場合には、化学療法+放射線療法が第一選択になります。高齢化社会を迎えて患者さんに手術に耐え得る体力がない場合や患者さん自身が手術を望まない場合にも適応となります。手術に匹敵する効果が得られる場合もあります。約8週間の治療期間を必要とします。副作用は化学療法、放射線療法単独より強く出ることがあります。
当センターでは、内科・外科・放射線科の専門医が連携を取りながらさまざまな職種のサポートのもとに、ひとりひとりの患者さんに最適の食道がん治療を提供します。