肝臓について
肝臓は右の肋骨(ろっこつ)に守られるようにして存在するヒトの体で最も大きい臓器で、体重の約50分の1を占めています。肝臓の主な働きは3つあります。1つ目は、私たちの体に必要な蛋白の合成・栄養の貯蔵、2つ目は、有害物質の解毒・分解、それと3つ目が、食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌です。
肝臓に生じるがんは「原発性肝がん」と「転移性肝がん」に大別されます。ここでは主に「原発性肝がん(肝細胞がん)」に関して説明します。
肝臓がんの症状
初期には自覚症状がほとんどなく、このことから肝臓は「沈黙の臓器」とよばれています。進行した場合には、腹部のしこり・圧迫感・痛みなどを訴えます。さらに進行すると、肝不全の症状として腹水やむくみ、黄疸、肝性脳症が起こってきます。破裂による出血が起こることもあります。
肝臓がんリスクが高い患者さん
本邦における原発性肝がんの主な発症原因はC型肝炎・B型肝炎ウイルスです。また最近はアルコール性肝硬変やNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の脂肪肝や肝硬変からの発症が増えており、また明らかな理由がなく肝臓がんを発症する場合もあります。
予防と検診
「肝癌診療ガイドライン」では、C型慢性肝炎・B型慢性肝炎・肝硬変を「高危険群」、C型肝硬変・B型肝硬変を「超高危険群」、として定期的に検査を受けることを推奨しています。
危険度に合わせて、腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II/AFP-L3の測定)、超音波検査、CT・MRI検査などを数か月から1年ごとに行うことをよいとされます。
予防としては、ウイルス性肝炎に対する治療が挙げられます。B型肝炎ウイルスに対する核酸アナログ長期内服やC型肝炎ウイルスに対するインターフェロンフリー直接作用型抗ウイルス薬の投与などが肝臓がんの予防に有効とされます。