骨・関節整形外科の特色

股関節に関する疾患・手術

膝関節に関する疾患・手術

変形性股関節症

股関節に生じる変形性関節症で股関節の関節軟骨が摩耗と関節の変形が主な病態で、主な症状は股関節や下肢の痛み、関節の動きの制限、歩きにくさ(跛行)、足の長さの差(脚長差)です。病期の初期や症状が軽度の場合には運動療法や体重コントロール、薬物療法などの保存療法で対応し、病期の進行や症状の増悪時には人工関節全置換などの手術療法が行われます。

  • 変形性股関節症のレントゲン画像01
    変形性股関節症のレントゲン画像

人工股関節全置換(Total Hip Arthroplasty: THA)

人工股関節全置換は変形性股関節症、大腿骨頭壊死症に対する代表的な手術療法で、安定した治療効果が期待でき本邦では年間8万件を超える手術が行われています。
当センターでは低侵襲(MIS)な仰臥位前方手術(Direct Anterior Approach: DAA)を導入しています。脱臼の心配が少ないこと、早期の回復が特徴です。
またCTデータをもとに患者個別にコンピューターシミュレーションによる三次元術前計画をおこない、最適なインプラントを正確に設置します。入院期間は約2週間で手術の後はリハビリテーションをおこない自宅退院を目指します。

  • 三次元術前計画 レントゲン画像
    三次元術前計画
  • 手術前 レントゲン画像
    手術前

  • 手術後

人工股関節再置換

人工股関節置換手術は安定した治療成績が期待できる術式ですが、再置換手術(入れかえ手術)が必要になる場合があります。主な原因としては人工関節の摩耗や破損、感染、くりかえす脱臼、人工関節周囲の骨折があります。再置換手術は初回の手術にくらべ高度な技術が必要とされます。当科では経験豊富な医師が詳細な検査をおこない最善の方法で再置換手術を行います。骨欠損の大きな症例での骨バンクからの骨移植手術や前方アプローチ(DAA)による低侵襲再置換など高度な技術を要する手術にも対応します。

骨バンクからの同種骨移植を併用した人工股関節再置換術 レントゲン画像
骨バンクからの同種骨移植を併用した人工股関節再置換術

人工股関節手術のながれ

人工股関節手術のながれ イメージ図

人工股関節手術に関する質問

(人工関節について)

手術すると痛みはとれるのでしょうか?

股関節が原因の痛みはほぼなくなります。術後に一時的な創の痛みや筋肉痛がでることもありますが徐々に軽快します。

人工股関節の耐久年数はどのくらいですか?

術後15年で95%以上の患者さんが再手術なしで過ごしています。現在使用されている人工関節は新しい素材の開発などでさらに耐久性が増していると考えられていますが、摩耗や破損、弛みなどの可能性はゼロにはなりません。定期的な検診が大切です。

人工関節はどのくらいの重さですか?

全体で200~300g程度です。術後にその重さを感じることはほとんどありません。

自分の手術ではどのような種類の人工関節が使われるのでしょうか?

当センターでは患者さんごとに三次元術前計画をおこない最も適切な人工関節の機種を選択しています。もし希望の人工関節がある場合には担当医にお尋ねください。

(手術前について)

輸血は必要ですか?

同種血(通常の)輸血をさけるために自己血貯血をおこなっていますが、貧血や通院が困難で貯血ができない場合には術中回収血輸血などもおこなっています。また宗教上の理由で輸血ができない場合には担当医にご相談ください。

手術は何歳まで受けられますか?

年齢制限はありません。術前検査で手術が可能と判断されれば何歳でも手術は可能です。

人工透析をしていますが手術は可能ですか?

可能です。入院中は当センターの腎臓内科と協力し周術期管理と透析をおこないます。術前にかかりつけの透析医からの診療情報提供が必要になります。

(入院・手術について)

両側同時手術はおこなっていますか?

おこなっています。両側の股関節が悪い場合には一度の入院・手術で済むのが利点ですが、手術時間や出血が多くなるので重篤な合併症などがある場合にはおこなえないことがあります。

どのような麻酔で手術するのですか?

通常は全身麻酔と腰椎硬膜外麻酔の併用でおこないます。術前の麻酔科受診で麻酔科医から説明があります。

(手術後について)

手術後に生活で制限することはありますか?

通常の仕事や旅行、趣味など特に制限する必要はありませんが、はげしいスポーツや重労働などは転倒や人工関節の破損につながるためにさけたほうがよいでしょう。

手術後にどのようなスポーツができますか?

ゴルフ、ハイキング、ウォーキング、水泳、などをおすすめします。走ったりジャンプをすることや転倒の危険が高いスポーツはさけたほうがよいです。

手術後に自転車に乗れますか?

手術前に乗っていた人は問題なく乗ることができます。

手術後に正座はできますか?

手術前に正座ができた人は通常できるようになります。

手術後に杖は必要ですか?

必ずしも必要ではありません。ただし術後しばらくは人混みに出る場合には周囲に注意を促すために使用することをおすすめします。

両足の長さは同じになりますか?

手術を受ける足が短い場合には長さをそろえることができます。ただし、反対側の股関節も手術を受ける予定がある場合には少し長めに調整することがあります。

退院後にリハビリは必要ですか?

通常は自宅などでおこなっていただければ十分です。場合によっては転院したり近くの病院などに通院しながらおこなうことも可能です。

休職はどのくらい必要ですか?

職種や通勤方法などで休職を要する期間はさまざまです。入院を含めて1~2ヶ月間で復職する人が多いようです。

臼蓋形成不全

股関節は、大腿骨の丸い先端(大腿骨頭)と、それがぴったりはまる骨盤側の凹み(寛骨臼)とからできています。臼蓋形成不全ではこの寛骨臼の凹みが浅く股関節の荷重部(骨頭の屋根のあたる部分)に力が集中し関節軟骨や関節唇が痛みやすい状態です。関節軟骨がすり減ると変形性股関節症に進展し、痛みが強くなったり動きが悪くなります。
症状の強さや臼蓋形成不全の程度、年齢などを考慮し保存療法か手術療法(寛骨臼回転骨切り、人工関節)を選択します。

  • 正常な股関節のイメージ
    正常な股関節
  • 臼蓋形成不全のイメージ
    臼蓋形成不全

寛骨臼回転骨切り(Rotational Acetabular Osteotomy: RAO)

寛骨臼回転骨切術は、臼蓋形成不全の股関節の骨を切り回転することで荷重する関節面をひろげる手術です。股関節の痛みを和らげるとともに変形性股関節症への伸展を予防する効果があります。

寛骨臼回転骨切りのシェーマ イメージ図
寛骨臼回転骨切りのシェーマ

  • 手術前 レントゲン画像
    手術前
  • 手術後 レントゲン画像
    手術後

大腿骨頭壊死症

大腿骨頭壊死症は大腿骨頭が無菌性、阻血性の壊死に陥り股関節機能が失われる難治性疾患です。ステロイドの全身投与、アルコール愛飲、過去の外傷(骨折、脱臼)、放射線照射が原因になります。
治療法は壊死の大きさや骨の圧壊の程度、症状の強さにより決定されますが手術療法では大腿骨頭回転骨切り、人工股関節全置換が主な術式です。

  • 大腿骨頭壊死症のレントゲン画像01
    大腿骨頭壊死症のレントゲン画像
  • 大腿骨頭壊死症のMRI検査レントゲン画像
    大腿骨頭壊死症のMRI検査画像

大腿骨頭回転骨切り

大腿骨頭回転骨切りは難治性疾患である大腿骨頭壊死症の手術療法の術式の一つで荷重部の壊死部を骨切り回転することで正常な骨に置き換える手術です。
リハビリに時間はかかりますが関節温存(自分の骨での再建)が可能なことが大きなメリットです。

  • 手術前 レントゲン画像
    手術前
  • 手術後 レントゲン画像
    手術後

変形性膝関節症

軟骨のすり減りによりひざの痛みが強くなったり、曲げ伸ばしが困難になり、活動性が低下します。手術以外の有用な治療法もあり、理学療法(ウォーキング、大腿四頭筋の強化トレーニングなど)、装具療法、薬物療法(痛み止めの貼り薬 や飲み薬、ヒアルロン酸の関節内注射)があります。しかし、我慢しすぎて病状が進行すると、手術を受けても曲げ伸ばしの制限が残ったり低下した筋力体力も戻らないため、適切な時期に適切な手術(人工関節、骨切り)を勧めます。また、 膝関節の変形の程度が強い場合は、手術を提案します。

人工膝関節置換手術

人工関節膝手術は、「虫歯を削って銀歯をかぶせる」イメージです。膝関節の3カ所(内側・外側・膝の皿)のうち、1カ所のみ摩耗しているものが一番軽症で、2カ所、3カ所と摩耗が進行していきます。 進行度に合わせた、過不足のない適切な術式選択をすることが重要です。
また、術後の数日は強い痛みを伴うため麻酔科と連携し神経ブロックを行うなど、痛みの軽減を行います。

・1カ所のみ摩耗している場合
その部分だけを人工関節で置換する単顆置換術(UKA)を行います。本来の構造物を大部温存することができ、より自然な感覚を維持できます。

・2カ所摩耗している場合
2カ所を人工関節で置換する二顆置換術を行います。これも、本来の構造物を大部分温存することができます。

・3カ所全て摩耗してしまった場合
3カ所全てを人工関節で置換する全置換術(TKA)を行います。進行した膝への最後の切り札であり、体重をかけても痛くない膝を獲得できます。本来の構造物をいくつか犠牲にしてしまうため、自然な感覚が得にくいといわれていますが、手術手技の工夫やロボット支援手術により成績向上を目指しています。


  • 単顆置換術(UKA)

  • 置換術(TKA)
膝の人工関節手術支援ロボット「ROSA Knee システム」

当センターは、2022年7月に人工膝関節置換術の手術支援ロボット「ROSA Knee」を導入しました。詳細は以下よりご覧ください。

人工膝関節置換手術支援ロボット
「ROSA Knee システム」

半月板損傷

若年と中高年に多く発症します。半月板は、膝関節のクッションにあたる部分であり、自然治癒しにくいのが特徴です。関節鏡を用いた縫合術・切除術などの手術治療を行います。

靱帯損傷

スポーツ活動や外傷によって、骨と骨をつないでいる靱帯が損傷します。代表例は前十字靭帯・内側側副靱帯などです。靱帯ごとに、手術を優先するべきか、手術以外の方法を優先するかが決まります。

大腿骨内顆骨壊死

半月板の機能が低下することで、骨が陥没するように欠けてしまいます。進行しないように装具(膝に装着するものや、靴の中に入れるもの)を使用し、治療します。進行し、痛みが強いようであれば、手術(人工関節、骨切り)を勧めます。

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