特色
当科には放射線治療機器としてリニアック(Varian iX:バリアン アイエックス)、ラディザクト(Radixact)、サイバーナイフ(CyberKnife)が導入されており、強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療(SRT)といった高精度放射線治療を積極的に施行するようにしております。
院内の症例だけではなく、他院からのご紹介についても受け付けております。また放射線治療に関するセカンドオピニオンにも対応いたします。詳細については医療連携課までご連絡ください。
診療体制(常勤スタッフ:2021年7月1日現在)
・放射線治療専門医 2名
・がん放射線療法看護認定看護師 1名
・医学物理士 2名
・放射線治療専門放射線技師 1名
・放射線治療品質管理士 1名
放射線治療のながれについて
①放射線腫瘍科受診
原則として他の診療科から放射線腫瘍科の受診予約を取っていただきます。
②放射線治療の説明
疾患や病気の進行具合、治療目的によって異なります。疾患ごとの治療内容については後述いたします。
③治療計画、治療開始日の決定
予約制となっていますが、疾患によって治療開始日が前後することがあります。
④治療計画CT撮影
治療開始前に必ず治療計画用のCTを撮影する必要があります。当科の診察フロアにある専用のCTでの撮影となります。体に直接マジックで印を書くほか、頭部や体幹部の動きを押さえる固定具を作成することがあります(図1)。ここで作成した固定具は治療の時に使用します。
(図1.頭頸部のシェル) |
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⑤放射線治療開始
通常の放射線治療の場合、原則として治療計画CTを撮影してから1~2日後、ラディザクトによる強度変調放射線治療(IMRT)の場合は7~10日後、サイバーナイフによる定位放射線治療(SRT)の場合は3~5日後に治療開始となります。
⑥経過観察
治療終了後は当科に定期的に通院していただきます。入院期間や日程については症例によって異なります。
主な疾患別の放射線治療について
乳がん
乳房温存手術後の症例に対して温存乳房からの再発を抑える目的で放射線治療が行われます。手術した乳房全体に25回前後照射し、手術所見や年齢によっては腫瘍が存在した部位に5回照射を追加します。近年、年齢や病状に応じて分割回数を減らした治療の有効性および安全性が明らかなとなっており、当科でも適応となる症例では16~20回の分割による治療を行っています。リンパ節転移を認めた場合には、乳房だけではなく鎖骨周囲のリンパ領域に対して放射線治療を行うことがあります。また、乳房全摘後に胸壁に対する放射線治療を施行する場合もあります。
早期肺がん
手術ができない、あるいは手術を希望しないI期の肺がん症例に対して定位放射線治療(SRT)を行います。当センターではサイバーナイフによる治療を原則としています。治療を行う前に腫瘍の近傍(肺の中)に金属のマーカーを埋め込む必要があります。治療回数は4~10回です。
進行肺がん(おもに手術ができないIII期)
原発巣とリンパ節転移を含めた範囲に放射線治療を行います。治療回数は30回/6週間前後で、可能であれば抗がん剤を併用します。ラディザクトによる強度変調放射線治療(IMRT)を行うこともあります。
食道がん
胸部食道がんの場合、手術が第一選択となりますが、いろいろな理由で手術が施行できない症例や手術を希望しない症例に対して根治的な放射線治療を行います。照射範囲は原発巣や転移のあるリンパ節だけではなく、下頸部(鎖骨周囲)から縦隔(心臓や食道がある部分)、さらに上腹部のリンパ領域が含まれることがあります。また、抗がん剤を同時に併用することがあります。治療回数は30回/6週間前後で、病巣の進展範囲によってはラディザクトを用いた強度変調放射線治療(IMRT)を行います。
肝臓がん
肝細胞がんや転移性肝がんのうち、大きさが2~3cm以内で病変の数が少なく、肝臓以外の臓器に病変が認められない場合に放射線治療の適応となることがあります。当科ではサイバーナイフによる定位放射線治療(SRT)を基本としていますが、適応や実際の治療回数等については担当医にご相談ください。
前立腺がん
当科では前立腺に限局した前立腺がんに対して、ラディザクトによる強度変調放射線治療(IMRT)を行っています。照射回数は28回/6週間前後です。1回の治療にかかる時間は20分前後です。病期の進行度によってホルモン療法を併用することがあります。また、根治的な前立腺全摘術が行われた後にPSAの値が高くなった症例に対して放射線治療を施行することがあります。
子宮がん
子宮頸がんが根治的な治療の主な対象となります。当センターでは腔内照射(くうないしょうしゃ:子宮内腔に照射の器具を直接挿入して行う放射線治療)は施行できませんので、外部照射のみ当センターで行い、腔内照射に際しては本治療が施行可能な近隣の病院を紹介しております。子宮頸がんや子宮体がん(内膜がん)の手術後の放射線治療はラディザクトを用いた強度変調放射線治療(IMRT)が施行可能です。
骨転移
さまざまながん種からの骨転移に対して放射線治療は有効です。症状や転移部位に応じて1~10回程度の治療を行っています。
脳転移
原疾患の状態や病変の個数・存在部位によって治療内容は異なります。サイバーナイフによる定位放射線治療(SRT)は脳神経外科の医師と相談し治療方法を決定しています。全脳脊髄照射も施行可能です。
強度変調放射線治療(IMRT:Intensity-modulated radiation therapy)について
従来の放射線治療では照射野内の強度は均一でしたが、IMRTでは照射強度を変調して照射を行います。したがって、腫瘍の形状に合わせて放射線を集中し、周囲にある正常組織への照射線量を低減することが可能です(周辺臓器に全く放射線が照射されないというわけではありません)(図2)。
当センターにはトモセラピー(Tomotherapy)の最新機種であるラディザクト(Radixact)が導入されています(図3)。本治療機器はIMRTの専用機であり、限局した前立腺がんや頭頸部がんに対するIMRT以外に、頭尾方向に広がった病変や複雑な形状の病変に対するIMRTも可能です。治療回数については腫瘍によって異なりますが、従来の放射線治療と同様の回数で行われることが多い治療です。適応となる疾患や治療回数など詳細については放射線治療担当医にご相談ください。
図2.前立腺がんに対する通常の放射線治療とIMRTの線量分布の比較
この写真ではIMRTの方が直腸に対する線量が低く抑えられていることがわかります(黄色矢印頭) |
通常の放射線治療 IMRT |
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(図3.ラディザクト写真) |
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定位放射線治療(SRT:Stereotactic radiation therapy)について
小さな病変に対して様々な方向から放射線を集中して照射する治療法で、ピンポイント照射ともいえます。従来の放射線治療よりも高線量を短期間で照射することで、腫瘍に対する効果が高くなります(図4,5)。 当センターではサイバーナイフ(CyberKnife)を用いたSRTを施行しています。体幹部の腫瘍に対する定位放射線治療(SBRT:Stereotactic body radiation therapy)は当科で協力して施行しています。
(図4.サイバーナイフ治療機器写真) |
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(図5.線量分布図写真:I期肺がんに対するSRT) |
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粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)について
通常の放射線治療に用いるX線は体表面付近で最大のエネルギーを放ったあと、徐々に減衰し(弱くなる)体外に抜けていきます。したがって、腫瘍の近傍にある正常臓器への照射を避けることが困難な場合があります。粒子線は体表面からある一定の深さのところで最大のエネルギーを放出し、そこよりも深部にはほとんど到達しないという物理的な特性を有しています(図6)。これをブラッグピークといいますが、ブラッグピークを腫瘍の体表面からの距離に調整・拡大し、さらにコリメーターやボーラスといった器具を用いることにより腫瘍の形状に一致した照射が可能となります(図7)。近年ではコリメーターやボーラスを必要としない照射方法(スポットスキャニング照射)が開発され実際の治療に応用されています。
現在国内では陽子線治療と重粒子線治療(炭素線治療)が保険診療あるいは先進医療として行われています。当センターには粒子線治療装置は導入されていませんが、粒子線治療の経験(陽子線治療および重粒子線治療)がある専門医が常勤していますので、粒子線治療の説明をしたり、筑波大学附属病院放射線腫瘍科などの粒子線治療施設に紹介することが可能です。
(図6.X線と陽子線の違い:筑波大学陽子線治療センターより提供) |
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(図7. ブラッグピークについて:筑波大学陽子線治療センターより提供) |
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