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日赤医療センターのがん医療

当センターがん医療の特徴

当センターは、平成14年から継続して、地域がん診療連携拠点病院に指定されており、専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力 体制の構築、がん患者さんに対する相談支援及び情報提供等を行っています。

がんの治療は、手術・化学療法(薬物治療)・放射線治療が中心となります。各治療に対応できる専門医を置いて、最大の効果を目指すことはもちろんのこと、その中で当センターでは、特に患者さんの負担を軽くすることに配慮しています。手術には、内視鏡手術やdaVinchなどのロボット手術を多用し、化学療法(薬物治療)は副作用を和らげ、入院ではなく外来で行えるようにしています。また、他の臓器への副作用を避け、病巣だけに放射線を当てることができる高精度放射線治療機器も備えています。
がんによる諸症状に対しては、症状の軽減や生活の質の向上を目的に、難治性疼痛に対する神経ブロック等や、緩和的放射線療法を行っています。
また、小児がんについては、その疾患に対応できる専門医療機関へご紹介しています。

治療が進むと、がんと関係ない病気(例えば心臓病や糖尿病など)の治療も必要になる患者さんが増えてきます。当センターは総合病院のため、がん以外の病気の診療も常時行っており、救命救急センターを有しているため急変にも対応できる体制を整えています。不幸にしてがんが進行した方のためには、苦痛を取り除くケアを中心とする緩和ケアも専門病棟を備え実施しています。

また、がんは症状が出てから治療するのではなく、健康診断やがん検診などの早い段階で見つけることが重要です。当センター内には健康管理センターがあり、がんの早期発見に関する診察や相談に応じています。
当センターではがん患者さんに対して、複数の科の医師のみならず看護師、臨床心理士、社会福祉士などの専門分野の知恵を結集して総合的に診療しています。

がんのプランニングサポート外来

(ご希望の方は火曜日午後の宮本医師外来を直接受診してください。他院からの場合は紹介状が必須となります。)

以前より全人的苦痛に対応するための緩和ケアは、終末期医療で行われてきました。しかし、これらの苦痛はがんと診断されたときから生じているのです。世界的には「早期からの緩和ケア」が進められ、日本でもがん対策基本計画において早期からの緩和ケアの普及が行われてきました。

しかし、日本の問題点として、緩和ケア科を受診したいと希望しても、抗がん剤治療をやめることが条件であり、適切なタイミングで受診できない場合が多いのが現状です。また、最近では遺伝子異常に応じた分子標的薬による治療法(プレシジョン・メディシン)や免疫腫瘍療法などの選択肢が急速に多様化し、患者さんも抗がん剤治療をやめることをすぐに受け入れることは困難であり、最期の時間を有意義に過ごせないケースが存在します。

さらに、患者さんと家族は完治が難しいがんと理解しつつも、抗がん剤治療をしながら、残されている時間をどう過ごしていけばよいか途方に暮れるケースも散見されます。しかし、一般のがん相談窓口ではこのような複雑に進歩した抗がん剤治療の継続ややめ時・副作用対応・症状緩和などに関する対応は難しいのが現状です。

完治が難しいがんと診断されると様々なニーズが発生しますが、特に緩和ケア・症状緩和に関しては事後的となり、後悔を生じることがあります。たとえば、人は仕事・教育・資産運用など人生設計を考えるとき、後悔や失敗をしないために適切な専門家に相談します。がんの治療も同様と考え、当科では遺伝子異常に応じた分子標的薬による治療法(プレシジョン・メディシン)や免疫療法の相談早期からの緩和医療治療の意思決定支援治療による有害事象対策適切な化学療法の継続まで幅広く対応するがんのプラニングサポート外来(毎週火曜日午後:担当宮本)を行っています。

緩和医療と腫瘍内科をともに精通している医師を緩和腫瘍内科医(パリアティブ・オンコロジスト)といいます。「がん自体の治療」と「緩和医療」を統合することにより、診断から終末期まで一貫して医療を受けることが可能となります。

当科はがん治療への入り口であり、診察後必要に応じて適切な部署と連携したり、当科で継続診療する形になります。

対象は以下の通りです

  1. 現在の状況(がんの進行度や抗がん剤治療の現状など)を理解したうえで、今後の相談を希望される方
  2. 抗がん剤治療中の症状緩和・副作用対策を望まれる方(他院にて治療中でも可、ただし民間療法・代替医療は除きます。)
    特に皮膚障害ケア浮腫ケアは専門の看護師が対応しています。
  3. 将来的に当センターの緩和ケア病棟(PCU)への入院を希望される方
    他院にて治療中でも、早期から当センターの医療従事者と関係性を築くことができます。
    もちろん当科で抗がん剤治療の継続も可能です。
  4. 早期からの緩和医療を望まれる方
  5. がんの遺伝子異常に応じた治療法の相談を希望される方
    (肺がんに関してはSCRUM-JAPANの協力施設であり、検体採取が可能な症例では当科で調査します。しかし、他がん種の場合は相談が中心となります。)当センターでは採血によるがん遺伝子検査が可能です。

 

特別な連携部門
がん治療におけるスキンケア相談外来

最近のがん治療は手術療法、放射線治療、化学療法、免疫療法の四大療法となっています。その中で、放射線治療や化学療法(特に分子標的薬)は、高頻度に皮膚障害を発生させます。そのため、治療開始時から予防的なスキンケアを行なうことが大切です。

皮膚障害にはさまざまな症状があります。例えば、手足が真っ赤にはれる手足症候群や爪のまわりに炎症を起こす爪囲炎が発生すると、疼痛により日常生活を送ることが困難となります。また、顔や頭にざ瘡様皮疹(ニキビのような発疹)がでたり、放射線治療による皮膚炎が生じるとかゆみや痛みを生じます。これらの症状は、個人差もありますが、予防的なケアや早期に対処することで悪化を防ぐことができます。

スキンケア相談外来では、治療前に予防的スキンケアの説明をし、治療中も継続的に相談外来を行っています。患者さん一人一人の環境や病状、社会背景を理解しつつ、日常生活上の相談を積極的に行い、さらに必要なケア問題には、腫瘍内科医、皮膚科医、他の専門分野の看護師や薬剤師などの多職種との適宜連携を図り、対応しています。

浮腫ケア外来

がんに罹患すると、腫瘍や治療の副作用などの影響により、手足や体幹に浮腫(むくみ)が生じることがあります。浮腫が強くなると皮膚が傷つきやすくなり、二次的に感染症が生じたり、身体の動かしにくさや倦怠感などの不快感が増すこともあります。

浮腫ケア外来では浮腫によって二次的な感染症が生じないよう、また、浮腫に伴う苦痛の緩和を目指し、浮腫に関する専門的な知識を持った看護師が対応します。当センターに通院中または入院中の方を対象に、主治医の許可を得た上で、浮腫に対する直接ケアを行ったり、セルフケアの方法をお伝えしています。

各分野の専門看護師との連携

治療方針の意思決定支援

最近では外来での抗がん剤治療が主流となっており、患者さんにとって重要な局面での話が医師のみからされる場合も散見されます。実際、病気の説明や治療方法に関する説明を医師から受け、今後の治療方針を決定していかなければならない場面において、衝撃や動揺から医師の説明内容が十分に理解できなかったり、どのように治療方針を決めて行ったら良いのか悩むことも少なくありません。そのような時、当科では専門の知識を持った看護師が医師の説明の場に同席し、病気や治療に関する理解を深めたり、治療方針の意思決定などをサポートいたします。

療養場所や療養生活の相談

身体の機能障害や体力の低下などにより通院が困難になってきたり、自宅での生活や介護に不安が生じた場合、どこで、どのように過ごしたら良いのか、どのような社会的支援が受けられるのかなどについて、看護師やソーシャルワーカーが相談に応じます。

臨床研究

当科ではさらなる治療向上や副作用軽減の目的のため、下記の臨床研究グループに属しています。主な臨床研究グループは下記のとおりです。

がん治療セミナー

当科では医療関係者向けに最新の海外学会報告から在宅医療など幅広くがん治療に関連した内容の勉強会を定期的(年に4~5回)に開催しています。毎回30~50名程度の内部・外部の医療関係者が参加しています。開催内容等は当センターホームページTOPの医療関係者へのお知らせでご案内しています。

セミナーイメージ

がん登録の実施

当センターでは、がん診療の実態を把握することを目的として、当センターに来られたがん患者さんの情報(診断、治療、生存状況など)を「がん対策基本法」、「がん登録等の推進に関する法律」に基づいて登録し、国に提出しています。

​1.がん登録とその必要性について

「がん登録」は、がんの診断や治療などに関する情報を登録・分析する仕組みのことです。

国は以下の統計情報により、わが国のがんの実態を明らかにし、国のがん対策や都道府県の医療計画に活かされ、がんの予防や早期発見、がん患者さんに対して適切な医療提供の方針を決定することができます。

  • 毎年新たにがんと診断される人がどのくらいいるか(罹患数)
  • がんと診断された人がその後どのくらいの割合で生存しているか(生存数)
  • 毎年どのくらいの人ががんで亡くなっているか(死亡数)    など

※がん登録の提出手続きは医療機関が行うものであり、患者さんの手続きはありません。

2.がん登録件数

当センターで「がん」と診断または治療、経過観察されたがん登録内訳

現在確定している最新データです。
(掲載データは、国立がん研究センターで集計・分析を行った後に確定されます。)

3.がん登録に関するQ&A

こちらをご覧ください

がん登録に関する情報へのリンクを掲載しています

セカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは

キャンサーボードの実施

キャンサーボードは、手術、放射線及び化学療法に携わる専門的な知識及び技能を有する医師、その他の専門を異にする医師等によるがん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換・共有・検討・確認等するためのカンファレンスです。
※患者さんは参加できません。

 

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
泌尿器
Cancer Board
婦人科
Cancer Board
血液腫瘍
Cancer Board
乳腺
Cancer Board
転移性脳腫瘍
Cancer Board

第2月曜日
午後

担当
・石川 晃(泌尿器科)

第4火曜日
8:30~9:00

担当
・山田 学(産婦人科)
・熊坂 利夫(病理部)

毎週水曜日
16:30~17:30

担当
・鈴木 憲史(血液内科)
・石田 禎夫(血液内科)

第2木曜日
17:15~18:00

担当
・荻谷 朗子(乳腺外科)
・裴 有安(病理部)

毎週金曜日
8:30~9:00

担当
・伊地 俊介(脳神経外科)
・國頭 英夫(化学療法科)
・香川 賢司(脳神経外科)
・髙橋 尚子(緩和ケア科)
・丸山 大樹(医療技術部)

婦人科
Cancer Board
Chest
Tumor Board
 遺伝性乳癌卵巣癌症候群
Cancer Board
化学療法
Cancer Board
第1・2・4・5月曜日
16:45~17:30

担当
・山田 学(産婦人科)
・國頭 英夫(化学療法科)
・野中 哲生(放射線腫瘍科)
・宮本 信吾(化学療法科)
・鈴木 恵子(看護部)

毎週火曜日
17:30~18:30

担当
・國頭 英夫(化学療法科)
・古畑 善章(呼吸器外科)
・出雲 雄大(呼吸器内科)
・香川 賢司(脳神経外科)
・裴 有安(病理部)

 

第3水曜日
17:15~18:00

担当
・荻谷 朗子(乳腺外科)
・笠井 靖代(産婦人科)

           

 

第4金曜日
14:00~15:00

担当
・國頭 英夫(化学療法科)
・立田 真也(薬剤部)
・柴田 基子(看護部)

大腸がん化学療法
Cancer Board
   乳腺
Cancer Board
   
第1・3月曜日
17:30~18:00

担当
・佐々木 愼(大腸肛門外科)
・赤井 隆司(大腸肛門外科)
・宮本 信吾(化学療法科)
・立田 信也(薬剤部)
・伊藤 麻紀(看護部)
   第1・3水曜日
16:30~17:00

担当
・宮本 信吾(化学療法科)
・荻谷 朗子(乳腺外科)
・髙橋 尚子(緩和ケア科)
・野中 哲生(放射線腫瘍科)
   
消化管
Cancer Board
       
第4月曜日
19:00~20:00

担当
・永岡 栄(胃・食道外科)
・吉田 英雄(消化器内科)
・風間 義弘(胃・食道外科)
・山本 信三(消化器内科)
       
肝胆膵
Cancer Board
       
第2月曜日
19:00~20:00

担当
・吉田 英雄(消化器内科)
・橋本 拓哉(肝胆膵・移植外科)
       

2023.8更新

PDCAサイクル

Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返すことで、がん診療連携拠点病院としての機能向上に努めています。
また、取組については、都内のがん診療連携拠点病院等と情報共有および相互評価を行っています。