心臓血管外科の特色

先天性心疾患に関しては周産期医療体制が充実しているため新生児や低出生体重児の症例が多いのが特徴です。2007年には当時世界最少となる1378gの体重の患者さんで大動脈スイッチ手術を成功させるなど、体格の小さな患者さんに対する手術技術は安定したものがあります。
2000年代初頭から、それまでほとんど外科治療の対象とされてこなかった18トリソミーや13トリソミーなどの染色体異常を持つ患者さんの手術治療に全国に先がけて取り組んでいます。

冠動脈疾患

心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈が狭窄や閉塞を生じた、いわゆる狭心症や心筋梗塞に対して冠動脈バイパス術を行います。近年ではこれらの疾患はカテーテルやステントを用いた血管内治療が多く行われるようになりましたが、血管が閉塞していてカテーテルが通過しない場合や、動脈硬化が強すぎて血管が有効に拡げられない場合があり、その際はバイパス手術が必要となります。カテーテル治療を担当する循環器内科と合同のカンファレンスで検討して手術の適応を決定しています。

心臓弁膜症

大動脈弁・僧房弁・三尖弁・肺動脈弁などの狭窄や逆流に対して手術治療を行います。心臓弁の不全に対しては人工弁置換の他、自己弁を温存する弁形成術も積極的に取り入れています。

大動脈疾患

腹部や胸部の大動脈が異常に拡張する大動脈瘤や、血管壁の層構造に裂け目が生じてしまう大動脈解離などを取り扱います。

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化により足の動脈が狭くなる病気です。典型的な症状は間欠性跛行(かんけつせいはこう)といい、200メートルほど歩くとふくらはぎに強い筋肉痛を生じて歩行困難になり、数分休憩すると痛みが消失することを繰り返します。

下肢静脈瘤

静脈の疾患で最も多いのが下肢静脈瘤です。下肢の静脈内にある弁が機能不全となり、逆流を生じるために下肢のうっ血を引き起こします。外傷や妊娠・出産などが契機となることもありますが、多くの場合は原因不明で、加齢による弁の変性が原因と考えられています。すねやふくらはぎに拡張・蛇行した静脈が浮き出てくるのが最初の症状です。進行すると足がむくんだり、足を重たく感じたり、局所に皮膚の変色や鈍い痛みを覚えることもあります。末期になると皮膚が崩れて潰瘍を生じることもあります。
治療の基本は弁が悪くなった静脈を抜去することですが、まれに抜去できない静脈に異常がある場合がありますので、手術決定の前には血管超音波検査が必要です。