好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症とは

ANCA関連血管炎のひとつである好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、先行する気管支喘息やアレルギー性副鼻腔炎のエピソードを認めることが多い疾患です。これらのアレルギー疾患をベースに血液検査で好酸球が増える所見を認めます。好酸球が各臓器に入り込み、しびれや麻痺の様な神経障害や副鼻腔炎、肺浸潤、心筋炎や腎障害、紫斑などの皮膚症状といった臨床症状を呈します。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症で実際に抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ(MPO-ANCA)抗体陽性を認めるのは3割~5割程度の方で、好酸球増加やさまざまな症状を総合して診断します。

当センターでできる検査・治療

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、末梢血の著明な好酸球の増加(末梢血白血球のうち10%以上が好酸球である、または好酸球1500/μl以上の所見)が特徴的であり、血清IgEの高値やリウマトイド因子陽性などが診断の参考所見となります。このため、血液検査で特徴的な自己抗体である抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ(MPO-ANCA)抗体を検索したり、好酸球数、IgEや炎症の程度の評価を行います。 診断のための障害臓器の生検として肺の組織生検は呼吸器内科と、アレルギー性鼻炎の評価や組織の生検は耳鼻咽喉科と連携して行うこともあります。多発単神経炎と呼ばれる神経障害や筋炎症状の診断目的で神経内科と連携して神経生検や神経伝導速度検査やMRI検査を行うこともあります。
治療には、顕微鏡的多発血管炎と同じく、出来るだけ早く“寛解”(病気の勢いを抑え安定した状態にする)に導入するための治療を行います。治療はステロイドによる治療が基本となります。重症度や臓器障害の状態に応じて、大量のステロイドを短期間に使用するステロイドパルス療法、シクロフォスファミド(エンドキサン)による寛解導入療法を行うこともあります。その後、再発を防ぐための寛解維持療法としてステロイドや免疫抑制薬を行います。これらの治療に加え2018年5月よりこれまで喘息に対して使用されていた生物製剤であるメポリズマブ(ヌーカラ)という抗IL-5抗体製剤がEGPAに保険適応となりました。当センターでは積極的にメポリズマブ(ヌーカラ)による加療も行っています。この他に、症状として多くみられる末梢神経障害で、ステロイドに対して効果が不十分な場合は、免疫グロブリン静注療法(IVIG)を追加することもあります。

当センターでの実績

2019年

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症:約20名

平均64.9±30.7歳と同じANCA関連血管炎である顕微鏡的多発血管炎(MPA)と比較して年齢層の低い方が多くいらっしゃいました。当センターでは、女性:男性はおよそ1:1.5で男性が多い傾向にありました。ほとんどの方が、アレルギー疾患として先行する気管支喘息を合併されており、このほか、半数の方でアレルギー性副鼻腔炎などの症状を認めていました。アレルギー症状以外にも8割の方でしびれなどの末梢神経障害の症状を認めました。治療としては、MPAと同じくほぼ全例でステロイドを使用されていました。およそ3-4割の方でステロイドと一緒にアザチオプリンなどの免疫抑制薬による治療を受けられていました。新規薬剤のメポリズマブ(ヌーカラ)はおよそ半数の方で使用していました。

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