顕微鏡的多発血管炎

顕微鏡的多発血管炎とは

血管炎症候群は免疫の異常によって血管の壁に慢性炎症が生じる病気の総称です。炎症を起こす部位は大動脈から毛細血管までと病気によって異なります。
ANCA関連血管炎は毛細血管を主とする細い血管に強い炎症を起こし血液検査でANCAという自己抗体が検出されることが診断の手がかりになります。顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の3種類のANCA関連血管炎があります。
顕微鏡的多発血管炎は、本邦において頻度の高い血管炎で、腎臓や肺を中心に血管炎を生じ60歳~70歳代の高齢の方に多く発症します。日本における発症率は18.2人/100万人と稀な疾患ではありますが、発熱や急激な腎機能の低下、蛋白尿や血尿、喀血、間質性肺炎などの症状を認めます。腎障害が最も多く、急速進行性糸球体腎炎を呈する代表的な疾患です。次いで、間質性肺炎などの肺病変が多く認められます。

当センターでできる検査・治療

厚生労働省による診断基準に則り、診断のための検査を行います。主要症候として①急速進行性糸球体腎炎、②肺胞出血や間質性肺炎、③腎臓・肺以外の臓器症状として紫斑や多発単神経炎などの症状を認めるかを診察や血液検査、CTやMRIなどの画像検査によって判断していきます。特徴的な自己抗体である抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)については、血液検査で確認を行います。肺や腎臓、神経などさまざまな臓器に症状を認めた場合、診断のために肺の組織生検は呼吸器内科と、腎生検は腎臓内科と、神経性県は神経内科と連携し行っています。主要組織所見として、これらの生検検査が診断の一項目となることがあります。最終的に抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)陽性、蛋白尿・血尿の有無、組織検査で細動脈や毛細血管などの壊死像、血管周囲に炎症性の細胞を認める所見があるかなどから総合的に診断されます。
治療には、出来るだけ早く“寛解”(病気の勢いを抑え安定した状態にする)に導入するための治療を行います。発症時に腎臓をはじめとした臓器障害を認める際は、ステロイドパルス療法、シクロフォスファミド(エンドキサン)による治療またはリツキシマブ(リツキサン)による寛解導入療法を行います。治療が難渋する場合は、血漿交換を行うこともあります。その後、再発を防ぐための寛解維持療法とてステロイドに加え、アザチオプリンなどの免疫抑制薬を併用したり、シクロフォスファミド(エンドキサン)やリツキシマブ(リツキサン)の定期投与を行っています。急性に発症し病勢が強い場合、間質性肺炎の急速な増悪や肺胞出血のため呼吸不全となり人工呼吸器管理を要したり血漿交換療法を行うこともあります。臓器障害の予後として約1割の方が6か月で末期の腎不全に至るという報告もあり、腎不全に陥った場合は、人工血液透析を導入することもあります。また、顕微鏡的多発血管炎に対する治療としてステロイドや免疫抑制薬を使用するため、治療に伴った感染症のリスクがあります。感染症のリスクを下げるための予防薬の内服や定期的な検査を行っています。

当センターでの実績

2019年

顕微鏡的多発血管炎:約20名(新規発症:4名)

平均76±18歳と比較的年齢層の高い方が多いです。当センターでは、女性:男性はおよそ1.5:1でした。肺病変や腎病変、神経障害はそれぞれ5~6割で認められました。すべての方でステロイドによる治療を行いました。およそ5割の方がステロイドと一緒にアザチオプリンなどの免疫抑制薬による治療が行われていました。4割の方がリツキシマブやエンドキサンパルス療法の治療を受けられていました。

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