全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデスとは

20〜40代の女性に多い膠原病です。原因は不明ですが免疫系の異常により、本来身体を守る働きをする免疫系が自分自身を攻撃してしまいさまざまな症状を呈します。三大初期症状は発熱、関節炎、皮疹です。特に皮疹は、顔面に出現する蝶々の形をした蝶形紅斑が有名です。紫外線に当たることが発病の引き金になることがあります。診断には血液検査で抗ds-DNA抗体や抗Sm抗体の上昇、補体の低下、白血球、血小板の減少や貧血を確認します。尿検査で蛋白尿や血尿の有無を確認します。ループス腎炎になると蛋白尿がみられ、腎臓の障害が進む前に腎生検(エコーで腎臓を映しながら針を刺して小さな検体を採取する方法が主流です)で診断します。他にも神経精神症状や心臓病変、肺病変、消化器病変など多彩な症状を認めることがあります。

当センターでできる検査・治療

全身性エリテマトーデス(以下、SLE)は全身に病勢を認めるため、それぞれの臓器の評価や症状に応じた検査を行う必要があります。臓器の病変評価のために頭部CT、MRIや胸腹部CT、心臓エコー検査、心電図、必要と判断した方には、腎臓内科と連携して腎生検を行いループス腎炎の精査、診断を行っています。この他にも脳波や呼吸機能検査なども必要時に行っています。また、SLEはシェーグレン症候群や抗リン脂質抗体症候群などの膠原病を合併することでも知られています。このため、血栓を来す疾患である抗リン脂質抗体症候群との合併が疑われる場合は抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなどの検査、下肢静脈エコーや造影CTで血栓症の有無を確認することもあります。シェーグレン症候群の合併が疑われる場合は、ガムテスト、唾液腺シンチグラフィー検査、眼科と連携しドライアイの評価や耳鼻咽喉科と連携し口唇生検などの検査を行い診断することもあります。
治療には症状に応じた量の副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンが一般的)の内服を行うことが多いです。重症例ではステロイドパルス療法を行うこともあります。病気の改善を早めるためや、ステロイドの減量を進めるために免疫抑制薬を併用することも多いです。免疫抑制薬にはアザチオプリン(イムラン、アザニンなど)、シクロフォスファミド(エンドキサンなど)、タクロリムス(プログラフ)、サイクロスポリンA(ネオーラル)、ミゾリビン(ブレディニン)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)などがありますが、病態や体質、患者さんの事情などを考慮して慎重に選びます。この他、ステロイドの投与量をなるべく減らせるように、日本で2015年にSLEへの投薬が認可された抗マラリヤ薬であるヒドロキシクロロキン(プラケニル)、同じく2018年に認可されたB細胞の刺激因子を阻害する生物学的製剤であるベリムマブ(ベンリスタ)、治療抵抗性の症例にはリツキシマブ(リツキサン)などの併用も積極的に行っています。この他、SLEは女性の患者さんが多く、免疫抑制薬の中には、妊娠中の使用が難しい薬剤が含まれており、妊娠を希望する患者さんにも使用薬剤の調整やご相談など柔軟に対応しています。SLEへの治療に加えて治療の要となるステロイドの副作用にも予防的な治療を行っています。

当センターでの実績

2019年

全身性エリテマトーデス:約110名(新規発症:6名)

平均50±30歳と幅広い方が通院されています。当センターは男性の患者さんも多く、女性:男性はおよそ5:1でした。およそ9割の方がステロイドを使用されていました。およそ5割の方でステロイドと一緒にタクロリムスやアザチオプリンなどの免疫抑制薬による治療を受けられていました。ヒドロキシクロロキンも約半数の方で使用されており、新規薬剤であるベリムマブ使用(2018年新規承認)を継続されている方は5名でした。